カテゴリー別アーカイブ: 資料

NIPT等の出生前検査についての要望書を提出しました

DPI女性障害者ネットワークは「NIPT等の出生前検査についての要望書」を2021年8月21日、NIPT等の出生前検査に関する専門委員会に提出しました。

2021年8月21日
NIPT等の出生前検査に関する専門委員会 座長 福井次矢様 構成員の皆様

DPI女性障害者ネットワーク
代表 藤原久美子
NIPT等の出生前検査についての要望書

私たち「DPI女性障害者ネットワーク」は1986年に発足し、ゆるやかなネットワークで障害女性の自立をめざし、社会に向けて意見を発信してきました。NIPT等の出生前検査についても、障害をもち女性である立場から、考えてきました。
「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」が2021年5月に出された「報告書」は、「Ⅵ 出生前検査についての基本的考え方」②に、「ノーマライゼーションの理念を踏まえると(中略)出生前検査をマススクリーニングとして一律に実施することや、これを推奨することは、厳に否定されるべきである。」とあります。これはとても重要であると思います。
出生前検査の技術が開発される背景に、障害に対する否定的な考え方があることは誰も否定できないでしょう。NIPT等の出生前検査の存在が、“子どもをもつ人は胎児の障害のあるなしを調べた上で、産むか産まないか選ばなければならない”といった考えを方を、社会に広めるのではないかと懸念してきました。
また、妊娠、出産、生まれた子の健康は、カップルがともに取り組む問題ですが、女性により多くの責任があるとみなされがちです。検査の存在が、健康な子を産まなければならないと女性を駆り立て、それ自体が女性を苦しめるおそれがあります。さらに、障害への差別・偏見が強く残るこの社会では、胎児の問題の指摘は、妊娠を継続するかどうかの判断に影響を与えます。陽性との結果を受けとった多くの人が中絶の選択に向かうなら、実質的なマススクリーニングになってしまうことは、想像にかたくありません。

出生前検査によって胎児の治療ができる場合があること、障害をもって生まれる子を迎える準備ができることも承知しています。しかし障害への偏見が強い中で、治療の方法がない疾患を対象とする出生前検査は、妊娠を継続しない決断を女性に迫る圧力になり得ます。私たちはそのような検査のあり方に、反対する立場です。
しかし、NIPT等の検査が今後も行われていくことが避けられないのであれば、「報告書」の基本的考え方が実現されることを強く願うものです。検査をマススクリーニングとして一律に実施することや、推奨することは否定されるべきです。「Ⅶ 出生前検査に関する妊婦等への情報提供」は、その点からたいへん重要です。「Ⅹ NIPT に係る新たな認証制度」で、「出生前検査認証制度等運営機構」の構成員に患者当事者団体が入ることも、重要であると思いました。

「報告書」にはまた、「Ⅳ 出生前検査に係る倫理的・社会的課題」で、「滑りやすい坂」の懸念が専門委員会で共有されたことも書かれています。疾患や障害が悪いものであり、それらを避けるために子どもを検査で選ぶべきだとする価値観が社会に定着することへの危惧は、私たちも強く抱いているものです。この危惧を現実のものとしないためにも、情報提供のあり方がたいへん重要であると考えます。
情報提供が、妊娠・出産・子育て関わる妊婦やその家族の不安や疑問に対応する支援の一環となり、私たちの社会が、疾患や障害は悪いものだという偏見から解放されることを願って、次のことを要望します。

1.「逸脱モデル」からの解放となる情報を提供してください
妊婦はさまざまな不安をかかえており、産み育てることに自信のある妊婦さんはいません。検査について、対象となる疾患について、医学的に正確な情報は必要ですがそれだけで不安は解消されません。どのような立場に立って情報提供を行うかが大切です。疾患や障害を正常からの逸脱、社会的にも望ましくないととらえる考え方(いわゆる「逸脱モデル」)を脱し、疾患が胎児のすべてではなく一側面であることを前提とする情報を、提供してください。「障害者権利条約」は、疾患や障害によって生きづらさがあるとすれば、その解消には、社会の側がもつ問題を解消する必要があるという「社会モデル」を打ち出しました。NIPT等の出生前検査に関する情報も、この立場に立って提供下さい。

2.実際にその疾患をもつ子どもを育てている親の経験を提供してください
「報告書」が、19頁で指摘しているように、疾患のある子どもの子育てについて、その実際を知る機会は、妊婦にとって最も必要なもことの一つです。そのために、親がどのように子どもと暮らしているのか、日常生活のレベルでの具体的な情報にアクセスできるようにしてください。
子育てをしている障害のある母親、父親もロール・モデルになるでしょう。自身が障害をもち障害のある子どもを育てている人たちもいます。障害がある人はよい母親・父親にはなれないという根深い偏見に抗して、子育てをする経験で培った、さまざまな知恵や工夫をもっています。それらは、一般の人たちにも、産科医、小児科医をはじめとする医療専門職にもほとんど届いていませんが、皆に、とくに妊婦にとって必要な情報であると考えます。

3.その疾患を生きている当事者の生活を知る機会を提供してください
「報告書」は21頁「Ⅷ 医療、福祉等のサポート体制」で、障害をもつ子の暮らしぶりや成長過程、家族との関わりに関する情報が、国民の間に浸透することが重要であると指摘しています。
疾患の当事者がどのように考え、どのような生活を送っているのかは、親のそれよりもさらに知られる機会が少ないものです。一般の人たちはもちろんのこと、産科医をはじめとする医療専門職にも必要でありながら、ほとんど届いていません。当事者団体との連携によって、妊婦も医療者も、具体的に知る機会が得られるようにしてください。成長して就業し、社会生活を送る当事者の姿も伝えて欲しいです。
 

労働省による、2021年6月15日「出生前検査及び流産死産のグリーフケアに関する自治体説明会」” 厚生労働省による「出生前検査及び流産死産のグリーフケアに関する自治体説明会」(2021年6月15日)資料、「18トリソミーの子どもと家族」、「21トリソミーのある方のくらし」は、2.と3.の参考になると考えます。

4.その地域で使える子育ての情報を提供してください
各地域で、疾患のある子どもの具体的な子育て支援の情報を得られるようにしてください。行政や医療機関、福祉施設が行う支援の他、民間団体によるサポートも、伝えてください。
妊婦さんたちへの情報提供は、ホームページへの掲載、リーフレットの配布等で行うとありますが、全国一律ではなく、地域における情報があることは大切です。当事者団体、親の会などの連携が必要で、「出生前検査認証制度等運営機構」に患者当事者団体が参画することを、この点でも活かしてください。

5.障害をもって生まれることへの差別をなくす教育に、取り組んでください
「報告書」には「Ⅺ その他の論点(今後の課題等)」の5で、学校教育段階での若年層への情報提供・啓発が、あげられています。かつて保健や生物の教科書等に、障害者が子どもをもつこと、障害のある子どもが生まれることに否定的な記述がなされており、大きな影響を与えました。
妊娠・出産する年齢になる以前に、学校教育でどのような情報が提供されるのかは非常に重要です。次のようなことは、小学校から伝えてほしいと思います。
すべての妊娠で障害のある子どもが生まれる可能性があるという、科学的な事実。障害のない子どもを産み育てるのがよい妻・母であるという、女性に対する偏見とプレッシャーを取り除く情報。障害者の権利を保障する条約の存在。すべてのカップルと個人に性と生殖に関わる健康と権利があり、子どもの数、出産間隔、出産する時を、責任をもって自由に決定してよいこと。そのための情報と手段を得ることは人権の一部であること。この権利を成り立たせる上で、障害のある人の家族形成、障害をもって生まれた子どもを育てる社会的サービスが必要であることを、明確に伝えて下さい。

この課題は文部科学省と連携して取り組む必要があります。厚生労働省から働きかけをして下さい。

6.NIPT を実施する医療施設の認証制度は、早急に立ち上げてください
NIPT を実施する医療施設の認証制度は、早急に運用されることが必要と考えます。現在も、認可外施設で十分な情報が得られないまま検査を受ける妊婦さんがいます。認証制度が運用されるまでの間も、その妊婦さんたちに、「報告書」にもとづいて、また私たちの要望を含めた情報が届くよう、対策を講じて下さい。

7.「出生前検査認証制度等運営機構」に女性の参画をもとめます
  「運営機構」に参画する、当事者団体をはじめとする各分野の構成員に、女性が多数含まれるべきです。オブザーバーではなく、意思決定に関与できる形での参画をもとめます。
妊娠・出産・育児を女性の役割とみなすのは間違いで、女性と男性両方がともに取り組む問題です。しかし現状では女性は、男性よりも多くの責任を負わされています。そして女性は、自身の身体で妊娠・出産を引き受けます。子どもをもちたいと考える多くの女性は、プレッシャーを受けずに、生まれる子をありのままに育てたいと願っています。女性の声は「運営機構」においても反映されるべきと考えます。

8.女性健康支援センター事業のあり方に、専門委員会は提言をして下さい
子ども家庭局母子保健課と障害保健福祉部障害福祉課は、今年6 月9 日に、地方自治体の母子保健主管部と障害保健福祉主管部に、「出生前検査に対する見解・支援体制について」を発出しました。
その「2.地方自治体において活用可能な予算事業等」で、女性健康支援センター事業の活用について書かれています。また、6月15日に開かれた「出生前検査及び流産死産のグリーフケアに関する自治体説明会」資料に、女性健康支援センター事業に今年度から「出生前遺伝学的検査(NIPT)を受けた妊婦等への相談支援体制の整備」が加えられたとあります。「報告書」にも、女性健康支援センター事業の活用が書かれています。
女性健康支援センター事業には、悩みを有する女性に対する相談指導、妊娠に悩む者に対する専任相談員の配置があります。相談員が受ける相談には、NIPT等の出生前検査を受ける前の女性の悩みが含まれる可能性があり、「相談支援体制の整備」は、すでに受けた妊婦だけではなく、あらゆる段階の妊婦の相談に対応できるようにすべきです。「相談指導を行う相談員の研修養成」も同様です。妊娠する以前から、NIPT等検査を受けたあとまでの幅広い女性に対して、相談に応じられる人の養成、研修であることが必要と考えます。

「報告書」は17頁で、妊娠の初期段階における情報提供を、出生前検査認証制度等運営機構がホームページ等を通じて発信するとともに、 市町村の母子保健窓口等においてリーフレットを配布する等の対応を行うとしています。
情報提供を担う人として、医師、保健師、助産師などが考えられますが、行政の窓口にいる人がリーフレットを配布したり、質問される場合もあるでしょう。どんな窓口で、誰からであっても、受け取る女性やカップルが「出生前検査を勧められている」「誰もが受ける検査だ」と誤解することがないように、「報告書」の基本的な考え方にもとづく情報提供がなされなければなりません。妊婦に接して情報提供を行う可能性のあるすべての人が、「ノーマライゼーションの理念を踏まえ、出生前検査をマススクリーニングとすることや、推奨することは厳に否定されるべき」を理解している必要があります。
「女性健康支援センター事業」における「出生前遺伝学的検査(NIPT)を受けた妊婦等への相談支援体制の整備」、「相談指導を行う相談員の研修養成」は、その点でも非常に重要です。女性健康支援センター事業を活用するとした専門委員会は、女性健康支援センター事業の適切なあり方を提言して下さい。

9.最後に
 「報告書」は、多くの重要な問題を提起しました。大事なのは、これを絵に描いた餅にしないことです。
医療、福祉、女性の健康支援、子育て支援、学校保健などの現場において、実践されなくては意味がありません。
「子母発0609第1号」には、次のようにあります。「妊娠・出産に関する包括的な支援の一環として、妊婦及びそのパートナーが正しい情報の提供を受け、適切な支援を得ながら意思決定を行っていくことができるよう、妊娠の初期段階において妊婦等へ誘導とならない形で、出生前検査に関する情報提供を行っていくこと」。これが行われるためには、現場で妊婦とパートナーに接し、情報提供を行うすべての人に、「ノーマライゼーションの理念を踏まえると(中略)出生前検査をマススクリーニングとして一律に実施することや、これを推奨することは、厳に否定されるべきである。」が理解されていなければなりません。情報提供に当たる人への研修が、どれほど大切であるか、認識してください。
同時に、妊婦及びそのパートナーの意思決定を可能とするには、生まれる子どもの障害の有無にかかわらず、歓迎と支援がある社会の仕組みが整備されていく必要があります。障害のある子の子育てが、そうでない場合に比べて不利であれば、それは意志決定への誘導として働くからです。

最初に書きましたとおり、私たちは、妊娠を継続しない決断を女性に迫る圧力になり得る検査のあり方に、反対する立場です。それでも、疾患や障害を「悪いもの」などと見なさない社会、そのような未来を願って、以上の要望を書きました。 
よろしくお願いいたします。
  
DPI女性障害者ネットワーク
東京都千代田区神田錦町3-11-8 武蔵野ビル5F
特定非営利活動法人 DPI 日本会議 気付

ダウンロードはこちら
PDFワード版テキスト

DPI女性障害者ネットワークの規約・活動計算書

DPI女性障害者ネットワークの規約
▽PDF▽ワード版テキスト

2010年度活動計算書(PDF)
2011年度活動計算書(PDF)
2012年度活動計算書(PDF)
2013年度活動計算書(PDF)
2014年度活動計算書(PDF)
2015年度活動計算書(PDF)
2016年度活動計算書(PDF)
2017年度活動計算書(PDF)
2018年度活動計算書
▽PDF▽ワード版テキスト

「グロー」及び「愛成会」での性暴力告発を受けての声明を公開します

DPI女性障害者ネットワークは、「「グロー」及び「愛成会」での性暴力告発を受けての声明」を2021年3月5日付でまとめましたので公開します。

「グロー」及び「愛成会」での性暴力告発を受けての声明
――福祉業界で起きている性暴力とハラスメントをなくすために

2021年3月5日
DPI女性障害者ネットワーク (代表・藤原久美子)

「社会福祉法人グロー」(滋賀県)および「社会福祉法人愛成会」(東京都)で働いてきた二人の女性が、グロー元理事長で愛成会元理事でもある北岡賢剛氏とグローに対し、長年にわたる性暴力とパワーハラスメントについての法的責任と損害賠償を求める裁判を起こした。今年1月14日、東京地裁で民事訴訟が始まっている。

すべての性暴力は、あらゆる人のあいだに起こるが、圧倒的に語られるのは、障害のない男性と女性のあいだでのこと。それも、女性が立ち上がらない限り、性暴力として認識されることはほとんどない。まして障害のある女性が、たとえ勇気をもって告発・提訴しようとしても、「証言が信用できない」などの理由で訴えが退けられたすえ、提訴にまでいきつかないことが多い。特に福祉の現場の中で障害のある女性が立ちあがることは、極めて困難である。そして、身体介助を必要とする障害のある女性が、介助のかたちで性暴力とハラスメントを受けた場合、その被害を語り、止めさせることはさらに困難である。

今回起こった福祉の現場での性暴力は、よいことをしている人たちのなかにまさかそんなことが起こるはずがないというような偏見が強固にあったために、そこに声を上げるには10年以上の時を要した。

私たちは、彼女たちがその偏見を超えて立ち上がってくれたこと、その勇気と変革への意思と行動に連帯してゆくことを決意した。

そして、この事件をきっかけに、障害のあるなし、性別や性的指向の違い、年齢の差異などのあらゆる違いを超えて、性差別が福祉業界のなかの構造的暴力であることを明らかにし、さらに、性暴力・性虐待の一掃のために、私たちの経験を基に変革を求めて語ることを宣言する。

今回の事件は、福祉業界における性暴力の氷山の一角でしかない。私たちはこの事件の告発を受けて、私たち障害のある女性の現実を明らかにする。

優生思想がはびこっている現代社会を生きる多くの女性にとってそうであるように、障害のある女性たちにとって「生きる」日々は、性的嫌がらせや性暴力に直面させられる日々であると言っても過言ではない。とくに隔離や排除に満ちた福祉の現場では、「障害のある女性の為に」という名目であらゆる暴力が起きてきた。
障害のある女性にとっては法律でさえ性と生殖への暴力として機能し続けてきたし、今もそうである。旧優生保護法がその典型であり、同法が改訂された後も、その優生思想は新型出生前診断などに反映されている。
私たちは性暴力のない社会作りのために、政治や行政の場に多くの女性、とくに障害のある女性やマイノリティの女性たちが参画し、自らの経験や知見を持って法や制度を変えていく必要があると考える。世界的にも遅れている女性の政治参加の促進を強く求める。

 介護・介助が必要となる重い障害を持つ女性にとっては、その中で起きる性暴力・性虐待等はさらに過酷だ。施設や在宅の中で介助や介護ということで起きている様々な性暴力はあまりにそれが日常と化しているので、それを意識化して告発に至るということはあり得ないことだった。それらを解決するために、私たちは隔離された生活からの自由をさらに求め続ける。地域での自立生活の中からも、性暴力の一掃を目指して活動する。
この事件によって福祉という現場に何が起こっているかが明らかになった。もっとも顕著な問題は、施設や在宅での、介助する側と受ける側の力の差だ。この力関係が性暴力・性虐待をつくりやすくするとともに、被害者が加害者を訴えることを困難にする。
そして、力関係を対等なものにする努力は、被害者になりやすい障害者にのみに任せられてきた。対等性、平等性を欠いた福祉の場で、全ての人に幸せな環境を作っていくことは全く不可能なことである。
③姿が美しいことが女性の価値であるかのような社会的差別・偏見も、性暴力の訴えを困難にする背景だ。男性が女性を値踏みするかのような主観的な美醜の価値観によって、女性は様々にランク付けされ、障害のある女性は多くの場合低いランクを与えられる。これは障害のある女性が自身を大切な存在として誇りをもつことを難しくする。そこに加害者がつけ込むとき、抵抗を困難にしている。
性暴力も姿の美のランク付けも、全ての女性に共通して降りかかっている問題だ。このたび提訴された事件が、障害のある女性と障害のない女性の連帯をさらに深め、性暴力の一掃にともに取り組むための出発点となるよう、手を取り合ってゆきたい。

男性中心主義社会では、男性たちは女性同士以上に男性らしさに縛られ、男性間の真の理解や共感、連帯も非常に乏しい。男性たちが、性暴力・性虐待・セクハラという差別的な行為について、自らが抱える問題として立ち向かってゆくなら、またそのために、男性同士がお互いの壮絶な孤独と孤立を超えてゆこうとするなら、女性たちは、とくに障害のある私たちは時に厳しく、そして勇気あるアライ(※)となってゆくことを諦めない。

※:社会的な立場が異なりながらも同じ価値観を持ち、同じ目標に向かっていく仲間、味方

 

■障害のある女性に対する差別がどのように過酷かの参考文献として紹介する

・女性の哀しみ—旧優生保護法、トリアージ、性暴力問題に通底するもの(安積遊歩寄稿)

掲載媒体「ミツイパブリッシング」2021年3月3日アクセス
https://mitsui-publishing.com/blog/20210215?fbclid=IwAR0H_Q0C–sHhCleycpkR_sI-2ECtkvCv7lnF0rRr5aOMZDTmldyc92uXoI

・『複合差別実態調査報告書 障害のある女性の生活の困難』
(DPI女性障害者ネットワーク) 2012年3月発行

・『抵抗の証 私は人形じゃない』(三井絹子)

・『神への告発』(箙田鶴子)

■DPI女性障害者ネットワーク ウェブサイト

https://dwnj.chobi.net

ダウンロードはこちら
ワード版テキスト

第5次男女共同参画基本計画素案についてパブリックコメントを出しました

2020年9月7日付

第5次男女共同参画基本計画素案について

DPI女性障害者ネットワークから提出したパブリックコメント

 

(1)該当分野:全体

意見:計画の基本的な方針に、「これからの男女共同参画に係る課題を、社会全体にとっては、「持続可能かつ国際社会の調和した経済社会の実現に不可欠な、一人一人の尊重、能力発揮、意思決定への参画」として、個人にとっては、「性別にとらわれることなく自らの選択によって長い人生を設計することができる環境の整備」として、2つに要約することができる(8p)」と書かれている。ここに障害のある女性の存在も含まれていると言えるだろうか。障害がある女性が、一人ひとり尊重され、力が発揮でき、意思決定に参画するためには、現状で、様々な壁がある。コロナ禍でもそうした課題がより一層見えてきている。そうした壁を取り除く、制度・政策を本気で進めてもらいたい。障害がある女性の権利の実現こそが、ジェンダー平等の実現につながる鍵となる。

そのためには、まず、4次計画の政策評価が不可欠だ。それがないために、4次計画の文言がそのまま繰り返されている箇所が散見される。障害者に関わる基本的な統計に関するジェンダー統計の整備も、4次計画でも示されながら、この間、進んでこなかった。障害者に関わる統計にジェンダー統計が示されないのは、障害者のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツの権利が保障されていないこととも関わっている。4次計画が実施されている間、旧優生保護法に関する国家賠償請求裁判が起こされ、社会的にも大きなニュースとなった。また、そうした流れを受け、強制不妊手術等の被害者への一時金支給法も作られた。障害をもつ女性たちのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツの課題は男女共同参画の実現にとって不可欠の課題であり、今回作られる計画には、こうした歴史の振り返りや反省も書き込むべきだ。

また、先に行われた第5次計画に関するオンライン公聴会では、手話通訳は実施されたが文字通訳(字幕)は実施されなかった。内閣府障害者政策委員会では、手話通訳と同時に文字通訳も実施されている。手話通訳と同時に文字通訳を実施すること、また、知的障害がある人に向けたわかりやすい説明の実施を求める。このパブリックコメント募集における素案文書も意見記入様式も、テキストデータによる提供がされておらず、視覚障害がある人が意見を提出しにくいなどの問題がある。様々な人が意見を出せるような方法での意見聴取を実施してもらいたい。

 

(2)該当分野:第2部 II 第5分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶

意見:「基本認識」に「被害者支援に当たっては、暴力の形態や被害者の属性等にきめ細かく対応する視点が不可欠である」とあるが、であるならば、相談・支援の各段階で合理的配慮が必要な人への支援体制、使える制度を作り、明示していくことが必要ではないか。

 

(3)該当分野:第2部 II 第6分野 男女共同参画の視点に立った貧困等生活上の困難に対する支援と多様性を尊重する環境の整備

意見:・第6分野の障害者が安心して暮らせる環境の整備の部分は、障害者関係法が羅列してあるだけだ。ここには、男女共同参画の推進の問題に特化した記載をしてもらいたい。

・障害者に関わるジェンダー統計について第4次計画と変わらない書き方になっている。 この5年間で何ができて、残る課題が何かを明示し、実際にどう変えていくのかを書くべきだ。現状では、障害者に関わる基本的な統計でジェンダー統計が欠如している。例えば学校基本調査において、障害のある児童生徒の性別統計は一部のみで、障害別の集計がほとんどである。障害者雇用促進法に基づく年次報告様式には、性別欄が設けられていない。

 

(4)該当分野:第2部 II 第7分野 生涯を通じた女性の健康支援

意見:・優生保護法をめぐって、この5年の間に大きな動きがあり、新法(一時金支給法)が作られている。この間の優生保護法に関する動き、新法成立のことについても、計画に書くべきだ。

・障害のある女性含む女性たちのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツという観点で考えたときに、様々課題がある。特に、性教育については、この間、七生養護学校での性教育への政治介入があったことに端を発し、取組への抑制がかかった状況が続いていると言えるのではないか。セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツの実現のためにも、体系的な性教育の実施が不可欠だ。

・同時に、出生前診断の広がりのなかで、障害を理由とする選択的中絶が広がることへの危惧がある。

 

(5)該当分野:第2部 III 第9分野 男女共同参画の視点に立った各種制度等の整備

意見:「1 男女共同参画の視点に立った各種制度等の見直し、イ 男女の多様な選択を可能とする育児・介護の支援基盤の整備」に、障害者施設の整備という文言が出てくる。これは、介護(介助)する側の負担軽減をいかに進めるか、という点に重点が置かれており違和感がある。性別・年齢・障害のいかんにかかわらず、介護を受けることは権利であり、介護を必要としている人が、当たり前に、介護・介助が保障された状態で暮らす権利がある。そのための介護保障制度の充実が必要だ。また、どこで誰と暮らすかを本人が決めることも権利だ。障害者は施設にという発想に囚われず、多様な選択が可能な制度の充実を求める。

 

男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン案へのパブリックコメント

東日本大震災直後、私たちは「あなたの周りにこんな方がいたら」というリーフレットを作成し、障害のある人が避難所などで円滑に支援が受けられるよう広報し、メディアからも注目されました。

これがきっかけとなり、今年1月、内閣府男女共同参画局を事務局とした、「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組に関する検討会」のヒアリングを受け、障害のある女性の立場から防災について意見を述べました。

この検討会は3月末に終了し、取りまとめとして国への提言本文と、新たなガイドライン(案)を発表。

4月28日までこのガイドライン(案)に対するパブリックコメントの募集があり、私たちは団体として意見を提出しましたので、ご報告いたします。
パブリックコメントの詳細についてはこちら(男女共同参画局HPにリンクします)

ガイドライン(案)は三部構成で一部と二部について意見を出しました。期限切れで提出に間に合わなかった第三部も含め、公開します。

なお、ガイドライン案は、パブコメを経て2020年5月末を目途に決定する見込みです。

 

災害対応力を強化する女性の視点
~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~(案)
に対するパブリックコメント

DPI女性障害者ネットワーク

第1部

該当箇所2p:「介護が必要な高齢者や障害者を抱える世帯」の「抱える」という表現は、荷物を抱えるという、マイナスイメージを感じさせられます
「災害時には、乳幼児や介助・介護が必要な高齢者や障害者のいる世帯」という表記が妥当です。
他にも同様の表現がある場合も含め修正してください。

該当箇所3p:「マイノリティーの立場にある女性が、意志決定の場に一定の割合を持って参画すべき」という文言を入れてください。
同じ女性であっても異なる背景を持つ人のニーズには気づかなかったり、代弁が難しいことは多いものです。
高齢、障害、ひとり親家庭、異なる民族等、様々な立場の女性の参画促進を明記していただきたいと思います。
併せて、防災・復興のための研修講師にマイノリティー女性、あるいは複合的困難について理解のある女性の登用を明記してください。
こうした困難を身をもって感じている当事者女性の参画により、複合的に困難な状況におかれている(交差性を有する)人たちへの支援について、具体的な提案が行え、人材育成が効果的に進むのではないでしょうか。

該当箇所4p:複合的困難・交差性は大変重要な課題であり、着目されたことは大変よいことです。交差性の説明がわかりにくいと思い、順番を入れ替えて下記のような表現を提案します。

女性の中の多様性に配慮する
男性中心の社会で少数者になりがちな女性は、置かれている状況により複合的な困難を抱える(交差性を有する)場合が多いことを認識する。
被災者支援においては、世帯構成、年齢、雇用形態、障害・持病の有無、国籍等の違いなど、特に社会的少数者の立場に留意する必要がある。

第2部

該当箇所20p:トイレの課題は生命にかかわる問題となる災害時に性別や年齢にかかわらず、あらゆる人にとって使いやすいトイレ
意見:トイレの課題はまさに生命に関わる問題。避難所のトイレ、仮設トイレ含め、障害者も使えるトイレであることを基礎とすべき。そのため、「性別や年齢」に加えて「障害の有無」にかかわらず、と明記し、障害者の存在の見える化をしてもらいたい。

該当箇所24p:イラストや図を多用し、視覚的に分りやすく伝えていくことが重要
意見:視覚障害者もいるので、「視覚的に」という言葉だけでは足りないと感じる。
イラストや図も視覚障害者にはバリアになる場合もある。書き方に工夫が必要。

該当箇所26p:年齢別や障害の有無別に把握する際にも、男女別とクロス集計するこ
とが重要
意見:とても重要なポイント。障害分野については性別が捨象されることも多いため、こうした点は強調してもらいたい。

該当箇所28p:「障害のある女性・・は、同性の介助者を必要とする場合がありますが、災害時にこうした女性人材が確保できず、適切な避難行動を取れなくなることがあります。
意見:身体介助については、基本、同性介助であるべき。災害時の人材確保というよりは、日頃から、介助派遣事業所などと連携することが必要なのだと感じる。

該当箇所36p:要配慮者も、女性と男性のそれぞれがいることから、女性と男性のニーズの違いに配慮したり、同性による介助・介護を実施したりすることなどが必要
意見:要配慮者の性別に着目することは重要なことだと思うと同時に、「男女のニーズの違い」ということだけが強調されると、男女の(役割やニーズの)固定化にもつながりやすい。
性別を含めた、要配慮者個々人のアイデンティティや尊厳を尊重した対応が必要、ということだと思う。

該当箇所37p:周りへ迷惑をかけることを恐れたり、避難所の衛生状態への不安、建物内に入ることへの恐怖感等から、避難所に滞在せず、在宅や車中泊、テント泊等の避難生活を選択する(せざるを得ない)人もいます。
意見:恐れや不安というよりも、アクセスできない、移動できない、トイレが使えないといった、避難所環境の問題が大きいのではないか。
気持ちの問題として記載するよりは、物理的環境の問題として記載してはどうか。

該当箇所43p:子供の安全を守るために、子供の年齢、性別、障害の有無・種類、リスクの特性について考慮すること、それらに関するデータを収集し対策に活かすこと、支援者についても男女のバランスを取ることが求められます。
意見:子どもを「わけるため」のデータ収集ではなく、「共に過ごすため」のデータ収集であることを明示してほしい。

該当箇所48p:応急仮設住宅の建設にあたっては、バリアフリー仕様としたうえで、敷地内に屋外照明を設置し、防犯にも気を付ける必要があります。
意見:バリアフリー仕様とすることは基本となるが、それだけでは足りない点も出てくる。建設にあたって、障害当事者が意見を出せる場が確保されることが必要。

第3部

便利帳の全体を通して、2019年に発生した新型コロナウイルスの様な感染症に対しての対策が書かれていないので、感染症も意識したガイドブックになると良いと思う。
感染症が拡大している時に災害が起きる可能性があるので、感染症の中でも人が集まらなければならない状況を考えて欲しい。

該当箇所P54  持ち物について

年齢や国籍性別障害の有無に関わらず、個人用の除菌シートは備えていたほうが良い。
スプーンとフォークは宗教に関わらず、持っていると良い。
避難所などに必ず使い捨ての箸や容器があるとも限らないので、何日間か空腹を凌げるよう食料も入れて置くと良い。
災害時は、情報を得る事も大切なので携帯電話やスマートフォンなど持っている場合は、手回しや人力で発電できるような充電器があると良い。

P55 P57 避難所や仮設住宅などのチェックシートについて

全体的に表現が曖昧で、子供が居る人達もエリアや介助が必要な人達のエリアがあると良い。
など、留意すべき点は分かるが、具体的なスペースの広さやプライバシーが確保されるパーテーションなどの大きさはどの様な物が望ましいのか分からないので、例えばプライバシーを守る為には、パーテーションは○○cm以上が望ましいなど、目安で良いが具体的に示してほしい。

P63 電動車椅子使用者や、人工呼吸器など医療的ケアが必要な人達への配慮について

障害のある人の中には、電動車椅子や人工呼吸器や必要な人達がいる。
その様な人達の生活には電気が必須なので、避難所毎に、電動車椅子や人工呼吸器など生きていくのに必要なものに対して電源や電気の保証がされる様に、インバーター発電機が2~ 3倍置かれると、より様々な人が使いやすい避難所になると思う。
また、電動車椅子や人工呼吸器などは精密機械の為、多くの人の手に触れないよう、それらを保管し充電ができる場所の確保を考えて欲しい。

新型コロナウイルス感染拡大下における障害女性の権利と生活の維持に関わる要望書を提出しました

DPI女性障害者ネットワークは、「新型コロナウイルス感染拡大下における障害女性の権利と生活の維持に関わる要望書」を、2020年4月30日、内閣総理大臣、内閣府特命担当大臣、内閣府男女共同参画局長宛に出しました。

 

2020年4月30日

内閣総理大臣                                          安倍 晋三     様
内閣府特命担当大臣(男女共同参画)  橋本 聖子     様
内閣府男女共同参画局長                         池永 肇恵     様

DPI女性障害者ネットワーク
代表 藤原久美子

〒101-0054
東京都千代田区神田錦町3-11-8武蔵野ビル5階
特定非営利活動法人DPI日本会議気付
電話:03-5282-3137 FAX:03-5282-0017
メール:dwnj@dpi-japan.org または dpiwomen@gmail.com
Web: https://dwnj.chobi.net/

 

新型コロナウイルス感染拡大下における障害女性の権利と生活の維持に関わる要望書

私たち、DPI女性障害者ネットワークは、国内の個人会員による、ゆるやかなネットワーク組織です。障害女性の自立促進と優生保護法の撤廃を目指して1986年に発足し、障害女性に関する法律や制度、施策のあり方をめぐる国内外の様々な課題に取り組んできました。

2012年にかけては、障害者であることに加え女性であるために被る困難を可視化しようと、全国の仲間に呼びかけ事例を収集するとともに施策の検証を行い、「障害のある女性の生活の困難―複合差別実態調査 報告書」を発行しました。そこで明らかになったことは性的被害の多さや、経済的立場の弱さ、介助を利用することの脆弱性、性と生殖の権利が否定されがちであること、本人が希望するか否かにかかわらず、家事や育児、家族の介護やケアを期待される実情でした。

私たちは、これまで、日常的にさまざまな困難を経験してきました。そして、東日本大震災などの大きな災害時には、その困難がより大きなものとなってのしかかってくることも経験しました。

私たちの社会には、日常的に、障害がある人を劣る存在とみなす優生思想が存在しています。あからさまな優生思想に基づいていた「優生保護法」は、優生保護にかかわる条文を削除して「母体保護法」に変わりました。しかし、その後、子どもが生まれる前に障害や病気等について調べる出生前診断が広がってきました。こうした技術の背後には、障害者は劣っており、産まれてこないほうがよいとする思想があると感じます。

新型コロナウイルスが感染拡大している今、私たちは、自分たちの命や生活が、後回しにされるのではないかという大きな不安を抱いています。特に障害のある女性、少女、セクシュアル・マイノリティなど、日常的に脆弱な立場にある人たちは、命の価値を低くされ、力をそがれる状況に置かれます。

私たちは、新型コロナウイルスの感染拡大が進行するなかで、あらためて、障害がある人、なかでも、脆弱な立場に置かれている障害のある女性たちの生活と権利が守られる社会を強く望む立場から、「現在生じている困難/これから予想される困難--当事者からの声」をもとに下記の要望を提出します。

 

要望事項

  1. 緊急事態状況下における、障害のある女性を含む脆弱な立場の人に向けられるジェンダーに基づく暴力への対応と、防止に関連する施策は不可欠な施策とされる必要がある。また、相談、避難等、その各段階において、障害のある人への対応を組み込むこと。
  2. 介助派遣サービスをはじめとした障害者の日常生活支援サービスは必要不可欠なサービスであり、緊急事態の間も維持される必要がある。また、障害のある人の自立生活等のサービスが継続して運営されるために、介助者などのケアワーカーに、感染予防の知識を伝えると共に、医療現場と同様に保護具などを提供すること。ケアワーカーの賃金を上げる、特別手当を出すなど、大幅な制度改善をすること。
  3. 救命医療を含めた医療において、障害、性別、または年齢に基づいて人々を除外または優先順位を下げる医療はあってはならず、すべての人々が差別なく検査と治療にアクセスできるようにすること。
  4. 緊急事態状況下でも、セクシュアルおよびリプロダクティブヘルスに関わるサービスは不可欠であり、差別を受けずに、それらサービスを利用できるようにすること。
  5. 新型コロナウイルスに関して行政が発信する情報はアクセシブルであること。また、ICTを使った情報発信、講座開催等を実施する際には、情報アクセシビリティが確保され、情報格差の拡大につなげないようにすること。
  6. 新型コロナウイルスへの対応やそこからの復興に関わる政策討議の場には、必ず複合差別の視点を持った障害女性をはじめとする当事者を入れること。

以上

 

現在生じている困難/これから予想される困難 ―――当事者からの声

■DV、虐待、暴力について

・パートナーが、コロナ感染対策に全く無頓着で不安が絶えない。生活が脅かされている。

・在宅や施設における暴力、虐待の増加が心配される。特に、障害のある女性、子どもなど、日ごろから社会的に弱い立場に立たされやすい状況にある人は暴力の被害にあいやすいことは過去の調査からも明らかになっている。

・障害があるDV等の被害者は、相談へのアクセスがしにくく、シェルターなどに入りにくく、緊急事態においては、より困難な状況に置かれる。

■ヘルパー派遣(常時介助)

・ヘルパー一人ひとりは、手洗いやうがいを徹底しているが、多くの利用者のところに派遣されているので誰が感染し、どこからウィルスが持ち込まれるか分からない現状。心配だが介助を利用しなければ生活が出来ないので、そのリスクは受け入れている。

・泊り介助に入ることができる女性介助者が日頃から極めて少ない現状。そのなかで、感染リスクを考えて、泊り介助に入ることが困難という人がでてくると死活問題。

■ヘルパー派遣(短時間介助)

・常時介助を必要としている人よりも短時間の介助派遣を必要としている人の方が困難が少ないと考えられがちだが、短時間なので一定期間介助が無くても生活できるだろうと判断されてしまい派遣を打ち切られてしまうなど、常時介助を必要とする人とはまた異なる危機的状況にある。

・女性は、障害のあるなしにかかわらず、普段から家族のケアを担っている場合が多く、家族のケアにかかわる情報をまず入手する役割も、日用品・食料品の買い物等で、必要に応じて動く役割も、いやおうなく担う状況があり、短時間介助であっても、外出支援の制度が使えなくなることは切実な問題。

・コロナは短期間で終息するものではないので、1日や2日程度であればひとりで乗り切れる場合でも、それが長期化すれば苦しい状況に立たされるのは明らか。短時間の介助を必要とする人のことも考えて欲しい。

・普段家族と暮らしていて外出のみに介助制度を使っている人も同様に、事業所側から移動支援を断られている人がいる。移動支援については外出する代わりに室内での介助に代替えすることも認められているが周知されていない。

・事業所の一つから、行き先が三つの密に触れるとしてメールのみで依頼を一方的に拒否された。行き先について事業所にお伺いを立てなければならない状況は避けたい。

・知人の視覚障害女性(一人暮らし)から担当のガイドヘルパーがウィルス感染を恐れて急に退職し買物に困っているという話を聞いた。以前からそのヘルパーだけが彼女を担当していて、人手不足から代わりのヘルパーが派遣できないとのことだった。

・コロナの感染拡大の中、ヘルパーの家事援助の時間数が少し減らされた。調理をヘルパーに手伝ってもらい自分で作るのだが、時間数が減り、麺類が多くなった(知的障害)。

■外出・買い物

・コロナウイルスが流行ってから警戒し外出を控えている。自分自身気管が弱いので、罹患すれば重症化する恐れがある、ということもあるが、外出したことによって介助者を危険に晒して、感染させてしまう方が怖い。

・外出を自粛。自分のことよりも、介助者への感染が心配。自粛することは仕方がないが、期間がわからないことが辛い。

・お米がなくなって以前から利用しているネットスーパーで頼もうとしたが、買占めのあおりで店舗に回しているためかお米とロールペーパーは注文できず、職場の友人にガイドしてもらい昼休みに買いに行ってやっと手に入れた状況(視覚障害)。

■介助者の保護・保障

・介助者に手当てを支給し、安心して介助に当たれるようにして欲しい。また、普段から介助者不足は大きな問題なので、介助者の賃金が大幅に上がるような制度改正をして欲しい。

・ヘルパーの感染リスクがあるため、家族の介護を受けて欲しいと言われた。家族にも別の仕事があり、家族に介護を受けることもできない。ヘルパーの不安も理解できるだけに、どう対応したらよいのか、難しい。

・副職で介助をしている介助者から「本職の会社から、副職でもしコロナ感染したら、即退職!」と言われたということで介助ができなくなったと告げられた。「コロナが落ち着いたら、また介助に入りたい」と言われたことは、救われた。

■医療の利用における差別

・都内でも、障害のある人がPCR検査を受けられずにたらいまわしになった事例がある。PCR検査を受けるのにも優先順位があるのではないか。家のなかにいると孤立しやすく、どれだけ支援してくれる人がいるのかもわからない。命に係わる問題であり不安を感じる。

・障害をもつ人の入院が敬遠されないか不安。普段でも経験が無いなどを理由に障害者が入院を断られた事例がある。

・軽症者は自宅、あるいは行政が用意する宿泊所へ行くことになるが、自宅では家族に感染させる恐れがあり、一人暮らしの人は容体の急変に備えるためにも、軽症者は全員宿泊所に入所することが望ましい。介助者がいないという理由で常時介助が必要な障害者が入所を拒否されるのではないかと危惧している。

・これまでも、障害のある女性の妊娠・出産、また中絶といったセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスへのアクセスは保障されていたとは言えないが、緊急事態下でさらに困難になるのではないかと危惧している。

■医療の対応

・治療において障害による心身の特性が理解されるか不安。障害によって、薬の効き方などが平均と異なる場合もある。医療を提供する側も体制が整わなくなったときに、そこまでの考慮がなされるか不安。

・日常的に使っている人工呼吸器や胃ろうに関わる器具のストックが底をついた場合、それらが手に入るのか、不安。

■情報保障

・今回のような病や、それに対する留意事項、診療機関の情報を入手するにも、情報アクセス面で困難が生じている。また、ようやく、緊急通報にも使える電話リレーサービスを公共インフラとする準備が進められているところだが、現状では、非常事態で緊急通報することにも制約が大きい。

・自治体によっては、新型コロナウイルスに関する相談窓口として電話のみ、または電話とFAXのみで実施している。聴覚障害者も自宅にFAXを持たない人も多く、電話とFAXのみでは連絡することさえできない状況におかれる。すでにSNSによる窓口を設けている自治体もあり非常に重要な取組である。

■情報格差

・情報格差が、命の格差につながる。情報の入手や自分からの発信の両方が保障されるべきだ。介助者による口述筆記や代筆、ニュースの読み上げなど、ICTをつかった情報介助が必要だと感じる。

・障害者全般に言えることでもあるが、中でも女性や高齢者は、ICTに苦手意識が強い人も多く、より情報格差が広がることが懸念される。

・国による支援制度の情報がコロコロ変わってしまい、どれを信じてよいのかわからず、不安がとても大きい。(知的障害)

■孤立

・ひしひしと孤立を感じて過ごしている。

・現状の困難や制約ゆえに何かできないことがあると、まるで障害のある本人の過失であるかのように責められることもある。

以上

ダウンロードはこちら

CEDAW(国連の女性差別撤廃委員会)の事前質問事項

国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)の次回日本審査の基となる事前質問事項が、2020年3月、同委員会で協議され採択されます。
2月3日にかけて、日本からも多くの団体(非政府組織:NGO)が、事前質問事項(リストオブイッシュ)に反映すべきことについてレポートを出しました。

そのひとつのDPI女性障害者ネットワークも含まれる合同レポートです。

NGO 合同レポート
国連女性差別撤廃委員会 第 77 回会期前作業部会
日本政府への事前リストオブイッシュ作成に向けて

日本語
ワード版テキスト レポート word
PDF レポート PDF

英語版
ワード版テキスト report word
PDF report PDF

国連のウェブサイトに日本や各国のレポートも掲載されています。
CEDAW – Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women
77 Pre-Sessional Working Group (02 Mar 2020 – 06 Mar 2020)
Consideration of State Reports
ページURL
https://tbinternet.ohchr.org/_layouts/15/treatybodyexternal/SessionDetails1.aspx?SessionID=1389&Lang=en

障害者権利条約と障害のある女性

権利条約6条(障害のある女性)の公式ガイドライン(3号意見)が昨年確定し、その日本語訳が公開されました!ぜひご一読を。
障害者権利条約の委員会は、締約国が条約を履行し報告するよう、公式ガイドラインを順次定めています。
3号意見は、実態とともに各分野に踏み込んで述べられています。
障害者権利委員会 障害のある女子に関する一般的意見 第3号(2016年)
「障害保健福祉研究情報システム」(日本障害者リハビリテーション協会)サイト上に掲載