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3月11日東京高裁判決を受けての要望書

2022 年 3 月 19 日


内閣総理大臣 岸田 文雄 様
厚生労働大臣 後藤 茂之 様
法務大臣 古川 禎久 様
DPI 女性障害者ネットワーク
代表 藤原 久美子


3 月 11 日東京高裁判決を受けての要望書


私たち DPI 女性障害者ネットワークは、1986 年の設立当初から、優生保護法撤廃を求めてきました。また、同法を背景とする、障害女性の子宮の摘出をやめるよう、抗議を続けてきました。障害女性のリプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利:第 5 次男女共同参画基本計画/内閣府より、以下同)が実現するように、他の女性団体とともに、厚労省へ意見書を提出するなどの活動もしています。

2022 年 3 月 11 日、東京高等裁判所(平田豊裁判長)は、請求を棄却した一審判決を覆し、国に対し優生保護法被害者である控訴人に対する損害賠償を命じる判決を言い渡しました。
2 月 22 日に出された大阪高等裁判所に続く、2 例目の原告勝訴判決であり、国の優生保護法の被害に対して賠償を認める判決を強く支持します。
東京高裁判決は、旧優生保護法の立法目的が差別的思想に基づくものであって正当性を欠く上、目的達成の手段も極めて非人道的なものであり、憲法 13 条及び 14 条 1 項に違反することは明らかであり、厚生大臣は、違憲・違法な優生手術を積極的に実施させていたとしました。
被害者の多くは、「不良」な子孫を持つことが防止されるべき存在として差別を受けた上、強度の侵襲を伴う不妊手術を受けさせられ、二重、三重にも及ぶ精神的・肉体的苦痛を与えられたものであること。
身体の拘束や欺罔等も許容し、被害者が優生手術であることを認識しづらい構造的な仕組みを構築、平成 8 年改正においても、優生条項の違憲性について明確に言及せず、その後も適法であるとの見解を表明して、被害救済のための措置を執らなかったことをもって、憲法より下位である民法の除斥期間を適用することは、憲法 17 条で保障された国民の権利を損なうことになるとしました。

除斥期間の起算日を、一時金支給法が成立した 2019 年 4 月 24 日の施行日から 5 年間の猶予期間を設けるべきとしたことも画期的であり、これを適応すれば、現在全国で提訴している被害者たちは、全員が対象となります。
そして裁判長は最後に、子どもを産めない身体にされたからといって、人としての価値が低くなったものでも、幸福になる権利を失ったわけでもなく、子どもをもうけることが出来ない人も、個人として尊重され、ほかの人と平等に、幸せになる権利を有すること。
子どもをもうけることのできない人たちに対する差別を助長することのないよう、報道などの際にも十分留意すること、差別のない社会を作っていくのは、国はもちろん、社会全体の責任だとの考えを述べました。

障害のある女性たちは、この法律で奪われた性と生殖に関する健康と権利を、今なお否定されがちです。
本判決が、障害女性の性と生殖に関する健康と権利を含むすべての尊厳を取り戻し、優生思想のない社会に向けた大きな一歩となるよう、国が上告せずこの判決を確定させることを、私たちは強く求めます。
国は本判決を重く受け止め、まだ声を上げることのできない方たちも含め、被害者に真摯に謝罪すべきです。そして、一時金ではなく賠償としての補償を行うための法律を策定し、被害の更なる調査、二度と同じ過ちを繰り返さないための検証を行い、優生思想のない社会にするための施策を講ずることに取り組むべきです。
ただどんなに謝罪と損害賠償を受けても、被害者の身体が元に戻るわけでありません。
しかし、すでに高齢となった原告たちに、これ以上心身共に大きな負担となる裁判を強いることだけは、止めてください。全国で25名の原告が提訴しましたが、すでに 4 名の方が亡くなられました。被害者に一刻も早い謝罪と損害賠償が望まれます。
国は上告を断念し、本判決を確定させ、各地の裁判を早急に終わらせることを強く求めます。

以上

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障害のある女性に係わる0歳児遺棄事件に関する要望

「障害のある女性に係わる0歳児遺棄事件に関する要望」を、厚生労働大臣、北海道知事、北海道檜山振興局長、江差町長に宛てて、2022年3月12日に、DPI女性障害者ネットワーク、DPI日本会議、しあわせなみだ、DPI北海道ブロック会議の連名で提出しました。

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大阪高裁判決を受けての声明

DPI女性障害者ネットワークは、「大阪高裁判決を受けての声明」を2022年2月28日、
内閣総理大臣、厚労大臣、法務大臣宛に提出しました。

2022年2月28日

大阪高裁判決を受けての声明

DPI女性障害者ネットワーク
代表 藤原 久美子

私たちDPI女性障害者ネットワークは、1986年の設立当初から、優生保護法撤廃を求めてきました。また、同法を背景とする、障害女性の子宮の摘出をやめるよう、抗議を続けてきました。障害女性のリプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利:第5次男女共同参画基本計画/内閣府より、以下同)が実現するように、他の女性団体とともに、厚労省へ意見書を提出するなどの活動もしています。

2022年2月22日、大阪高等裁判所第5民事部(太田晃詳裁判長)が大阪地裁判決を覆し、国に対し優生保護法被害者である控訴人らに対する損害賠償を命じる判決を言い渡しました。
優生保護法の被害に対して初めて賠償を認める判決を強く支持します。
高裁判決は、旧優生保護法が、特定の障害や疾患のある人を一律に「不良」と断定したことは、非人道的かつ差別的で、個人の尊重という日本国憲法の基本理念に照らし是認できないとしました。子を産み育てるか否かについて意思決定をする自由及び意思に反して身体への侵襲を受けない自由を、明らかに侵害しており、正当化できるものではなく、憲法13条、14条1項に反し違憲であるとしました。
また、子を産み育てるか否かについて意思決定をする自由は、性と生殖に関する健康と権利も保障することであり、この権利を否定した旧優生保護法は性と生殖に関する健康と権利にも反するものであったことも認めました。

障害のある女性たちは、この法律で奪われた性と生殖に関する健康と権利を、今なお否定されがちです。
そして優生保護法の被害に対し、初めて控訴人に除斥期間を適用しないとして、賠償を認めた判決を強く支持します。さらに国際人権規約においては「強制不妊手術に時効は適用すべきでない」とされており、今回の判決はこれまでの地裁の判決を覆し、「除斥期間の適用をそのまま認めることは著しく正義・公平の理念に反し」ているとして、初めて除斥期間の適用除外を認めた点で画期的です。
本判決が、障害女性の性と生殖に関する健康と権利を含むすべての尊厳を取り戻し、優生思想のない社会に向けた大きな一歩となるよう、国が上告せずこの判決を確定させることを、私たちは強く求めます。

国は本判決を重く受け止め、まだ声を上げることのできない方たちも含め、被害者に真摯に謝罪すべきです。そして、一時金ではなく賠償としての補償を行うための法律を策定し、被害の更なる調査、二度と同じ過ちを繰り返さないための検証を行い、優生思想のない社会にするための施策を講ずることに取り組むべきです。
ただどんなに謝罪と損害賠償を受けても、被害者の身体が元に戻るわけでありません。
しかし、すでに高齢となった原告たちに、これ以上心身共に大きな負担となる裁判を強いることだけは、止めてください。全国で25名の原告が提訴しましたが、すでに4名の方が亡くなられました。被害者に一刻も早い謝罪と損害賠償が望まれます。
国は上告を断念し、本判決を確定させ、各地の裁判を早急に終わらせることを強く求めます。

以上

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