DPI女性障害者ネットワークは、「大阪高裁判決を受けての声明」を2022年2月28日、
内閣総理大臣、厚労大臣、法務大臣宛に提出しました。
2022年2月28日
大阪高裁判決を受けての声明
DPI女性障害者ネットワーク
代表 藤原 久美子
私たちDPI女性障害者ネットワークは、1986年の設立当初から、優生保護法撤廃を求めてきました。また、同法を背景とする、障害女性の子宮の摘出をやめるよう、抗議を続けてきました。障害女性のリプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利:第5次男女共同参画基本計画/内閣府より、以下同)が実現するように、他の女性団体とともに、厚労省へ意見書を提出するなどの活動もしています。
2022年2月22日、大阪高等裁判所第5民事部(太田晃詳裁判長)が大阪地裁判決を覆し、国に対し優生保護法被害者である控訴人らに対する損害賠償を命じる判決を言い渡しました。
優生保護法の被害に対して初めて賠償を認める判決を強く支持します。
高裁判決は、旧優生保護法が、特定の障害や疾患のある人を一律に「不良」と断定したことは、非人道的かつ差別的で、個人の尊重という日本国憲法の基本理念に照らし是認できないとしました。子を産み育てるか否かについて意思決定をする自由及び意思に反して身体への侵襲を受けない自由を、明らかに侵害しており、正当化できるものではなく、憲法13条、14条1項に反し違憲であるとしました。
また、子を産み育てるか否かについて意思決定をする自由は、性と生殖に関する健康と権利も保障することであり、この権利を否定した旧優生保護法は性と生殖に関する健康と権利にも反するものであったことも認めました。
障害のある女性たちは、この法律で奪われた性と生殖に関する健康と権利を、今なお否定されがちです。
そして優生保護法の被害に対し、初めて控訴人に除斥期間を適用しないとして、賠償を認めた判決を強く支持します。さらに国際人権規約においては「強制不妊手術に時効は適用すべきでない」とされており、今回の判決はこれまでの地裁の判決を覆し、「除斥期間の適用をそのまま認めることは著しく正義・公平の理念に反し」ているとして、初めて除斥期間の適用除外を認めた点で画期的です。
本判決が、障害女性の性と生殖に関する健康と権利を含むすべての尊厳を取り戻し、優生思想のない社会に向けた大きな一歩となるよう、国が上告せずこの判決を確定させることを、私たちは強く求めます。
国は本判決を重く受け止め、まだ声を上げることのできない方たちも含め、被害者に真摯に謝罪すべきです。そして、一時金ではなく賠償としての補償を行うための法律を策定し、被害の更なる調査、二度と同じ過ちを繰り返さないための検証を行い、優生思想のない社会にするための施策を講ずることに取り組むべきです。
ただどんなに謝罪と損害賠償を受けても、被害者の身体が元に戻るわけでありません。
しかし、すでに高齢となった原告たちに、これ以上心身共に大きな負担となる裁判を強いることだけは、止めてください。全国で25名の原告が提訴しましたが、すでに4名の方が亡くなられました。被害者に一刻も早い謝罪と損害賠償が望まれます。
国は上告を断念し、本判決を確定させ、各地の裁判を早急に終わらせることを強く求めます。
以上